生理周期と運動パフォーマンス月経周期と運動パフォーマンス

月経周期と運動パフォーマンスは関係がある?

月経期や黄体期(月経前)に運動パフォーマンスが低下すると感じているアスリートは多いようです。しかし、女性ホルモンと運動パフォーマンスの関係をみるには競技種目などを詳細に検証する必要があり、そうしたデータはまだ十分ではありません。運動パフォーマンスには身体・技術・戦術・心理など複数の要因が影響するため、それらの要因や個人差を総合的に判断することも必要となります。

一方で、月経周期異常は運動パフォーマンスに影響する可能性があります。競泳選手を対象に、月経周期が正常な選手と月経周期異常の選手で同程度のトレーニングを12週間行った後に泳ぐ速度を調べたところ、月経周期が正常な選手のグループは8.2%向上しましたが、月経周期異常の選手のグループは9.8%低下しました。これは、月経周期異常者が慢性的に利用可能エネルギー不足となっており、低代謝状態を引き起こしたためと考えられています。この点から、運動パフォーマンス向上のためにも月経周期を正常に保つことは意義があるといえます。

動作の素早さを評価する方向変換走テストにおいて、月経期は、月経ではない期間(卵胞期後期・黄体期)と比べてタイムが低下するという報告があります。これは、月経による下腹部痛や吐気などの月経困難症が影響したと考えられています。

また、月経周期と跳躍力を調べた調査では、月経随伴症状のある人とない人で分けた場合、月経随伴症状がない場合は周期に関係なくほぼ一定であることがわかっていますが、月経随伴症状がある場合は、月経期に跳躍力が低下することが報告されています。

生理と運動パフォーマンスの関係は?

「生理や生理前になるとパフォーマンスが下がる」と感じるアスリートは多いようです。生理周期には女性ホルモンが関係していますが、女性ホルモンと運動パフォーマンスの関係はまだ明らかになっていません。

ただ、生理が不順だったり、生理がきちんとこないという場合は、運動パフォーマンスにえいきょうがあるといわれています。競泳選手を、生理周期が正常なグループと不順/きちんとこないグループにわけ、同じトレーニングを12週間行ってタイムを調べたところ、生理周期が正常なグループではタイムが8.2%向上しましたが、不順/きちんとこないグループは9.8%下がりました。生理周期が不順/きちんとこないと、からだが使えるエネルギーが不足している状態であると考えられています。運動パフォーマンスを向上させるためにも、生理周期を正常に保つことは大切だといえます。

【覚えておこう!】
生理周期:「前回の生理が始まった日」から「今回の生理が始まる前日」までの日数

生理の時の症状(しょうじょう)は運動パフォーマンスに影響する?

生理周期と、動きの素早さを調べるテストを行ったところ、生理中は、生理ではないときと比べてタイムが下がるという結果でした。これは、腹痛やはき気があったためだと考えられています。

また、生理周期とジャンプ力を調べるテストでは、生理の時の症状(しょうじょう)がある人とない人にわけた場合、生理の時の症状(しょうじょう)などがない人は、生理周期に関係なくジャンプ力は同じでしたが、生理の時の症状(しょうじょう)がある人では、生理中にジャンプ力が下がるという結果でした。

参考文献

  • 中村真理子著: 月経周期と運動パフォーマンス.スポーツを止めるな編,1252公認 女子アスリート コンディショニング エキスパート検定,pp121-123,東洋館出版社,2024.

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