思春期は、心も身体も大きく変化する時期です。性別を問わず、一般的には友人関係を通じて、試行錯誤を繰り返しながら自分を探すことが心の課題です。しかし、アスリートの場合は、スポーツという環境の特質から次のような傾向があります。
- 幼い頃から、多くの時間をトレーニングに割いているため、同年代の友だちと過ごす時間が少ない。
- いわゆる“反抗期”に、試合や遠征などで親元から離れることが多いため、親との摩擦を経験する機会が少ない。
- 常に「成功」「勝ち」を目指す環境にあるため、「失敗」「負け」に伴う葛藤を受け必要以上に避けようとする。
人の心は年齢に応じて段階的に成長していきます。しかし、思春期のアスリートは、上記の特徴から、一般的に必要とされる過程とは異なる歩みをとることがあります。学童期で習得あるいは克服していく経験が乏しいまま、思春期の早い段階から「自分はどのような人間か」といった自己形成の課題に直面することが少なくありません。思春期のアスリートが健全な自己を形成していくためには、安心して試行錯誤できるような周囲のサポートが必要です。