思春期アスリートのこころの成長は?成長期・思春期アスリートの心の発達は?

思春期は、心も身体も大きく変化する時期です。性別を問わず、一般的には友人関係を通じて、試行錯誤を繰り返しながら自分を探すことが心の課題です。しかし、アスリートの場合は、スポーツという環境の特質から次のような傾向があります。

  • 幼い頃から、多くの時間をトレーニングに割いているため、同年代の友だちと過ごす時間が少ない。
  • いわゆる“反抗期”に、試合や遠征などで親元から離れることが多いため、親との摩擦を経験する機会が少ない。
  • 常に「成功」「勝ち」を目指す環境にあるため、「失敗」「負け」に伴う葛藤を受け必要以上に避けようとする。

人の心は年齢に応じて段階的に成長していきます。しかし、思春期のアスリートは、上記の特徴から、一般的に必要とされる過程とは異なる歩みをとることがあります。学童期で習得あるいは克服していく経験が乏しいまま、思春期の早い段階から「自分はどのような人間か」といった自己形成の課題に直面することが少なくありません。思春期のアスリートが健全な自己を形成していくためには、安心して試行錯誤できるような周囲のサポートが必要です。

思春期になると、こころもからだも大きく変わります。このころになると、女子も男子も、友だちとの関係を通じて成長していきます。生活がスポーツ中心になるアスリートでは、次のような特ちょうがあります。

  • 同じ年の友だちといっしょに遊んだりする時間が少ない。
  • 試合などがあって家をはなれることが多いので、いわゆる反こう期の経験が少ない。
  • 「勝つ」ことが増えてくると、「負け」を受け入れるのが難しい。

人のこころは、年れいに合わせて、少しずつ階段をのぼるように成長していきます。でも思春期のアスリートは、上にあるような特ちょうから少しちがった階段ののぼりかたをします。そのため、学童期に身に付けたり乗りこえていく経験が少ないまま、思春期の早い段階から「自分自身を作っていく」という課題に直面することが少なくありません。

参考文献

  • Erikson, E.H. (1959)Identity and the Life Cycle, New York: International University Press. (エリクソン, E.H., 西平直・中島由恵(訳)(2011)『アイデンティティとライフサイクル』, 誠信書房:東京)
  • 無藤隆・森敏昭・池上知子・福丸由佳 編(2009)よくわかる心理学. ミネルヴァ書房, p.172-177.
  • 無藤隆・岡本祐子・大坪治彦 編(2009)よくわかる発達心理学 第2版. ミネルヴァ書房, pp. 172-173.
  • 江田香織・関口邦子・秋葉茂季(2017)来談する思春期トップアスリートの心理的特徴および心理的発達過程. スポーツ精神医学, 14, 13-26.

「こころ/スポーツ心理学」の記事を読む