産後復帰過程のこころ産後復帰過程のこころ

産後の心の特徴は?

妊娠・出産そして産後の復帰過程を通じて、女性アスリートの身体は大きく変化します。それに伴って、心も揺れ動きます。産後トレーニングを開始すると、育児と競技の両立に直面し、アスリートの「わたし」と母親の「わたし」との間で葛藤が生じることがあります。産後に競技復帰を目指す過程は、アスリートとしての「新しいわたし」を作り上げていく過程でもあるのです。
以下は、アスリートに行ったインタビュー調査で明らかになった、産後復帰過程の心理的特徴です。

産後1ヵ月:体力の消耗が顕著な時期

  • 妊娠前と大きく異なる身体への戸惑い。
  • 「できる動きとできない動き」を明確にし、心身の両面から「できる感覚」をつかんでいく。

産後3ヵ月:「できないことにこだわり過ぎない」という心の動きが出る

  • 妊娠前に考えていた復帰のイメージではなく、今の自分に適したペースで取り組むことが近道と思える。

産後6ヵ月:専門的な練習ができるようになるが、育児の問題で悩む

  • 子どもの発熱などで練習が予定通りできない、得意技ができない、などの問題に直面する。
  • できないことを受け入れ、新たな動きや技を模索するなど、解決に向かう。

産後12ヵ月:子供の急な体調不良などの中、できることに目を向ける

  • 産前にはできなかったプレースタイルや技の獲得を実現する。
  • 自分のペースで取り組むことを大事にする。

 

どのようにメンタルを整えればよい?

大会復帰の目標を設定したものの、妊娠前の状態に戻すにはどのくらいかかるのか、焦りや不安を感じることがあります。また、競技と育児を両立するうえで、さまざまなストレスが生じることもあります。そんな時は次の方法を試してみましょう。

1)「できるようになったこと」を記録する

私たちは、ポジティブな感情よりネガティブな感情を大きく捉えがちです。妊娠前
と比較してできなくなったことより、出産後に「できるようになったこと」に注意を向けて、些細なことでも記録していくとよいでしょう。

2)“マインドフルネス”を実践する

過去の出来事や未来に不安や恐れを抱いたり、繰り返し考えて不安や恐れが増し
てしまう場合は、マインドフルネスを実践してみましょう。寝る前などのリラックスできる時間帯を選び、呼吸に注意を向けていきます。感情や考えが浮かんできても評価したり判断することはせず、注意を“今、この瞬間の呼吸”に戻します。毎日少しずつでも、継続することが大切です。

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参考文献

  • Massey KL, Whitehead AE. Pregnancy and motherhood in elite sport: The longitudinal experiences of two elite athletes. Psychology of Sport and Exercise, 60, 102139, 2022.
  • 江田香織,千葉陽子. 産後アスリートの競技復帰における心理的変容過程. 日本スポーツ心理学会第46回大会発表論文集: 36-37, 2019.

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