カーリング 小穴桃里選手

カーリング競技の小穴桃里選手は、2022年10月に第一子の女の子を出産。出産2カ月前からハイパフォーマンススポーツセンター(HPSC)国立スポーツ科学センター(JISS)にて女性アスリート研究・支援プロジェクトによるサポートを実施。ミラノ・コルティナ2026オリンピックでのメダル獲得を目指す小穴選手に、JISSでのサポート内容や今後の女性アスリート支援に期待することを聞きました。インタビュー内容は2023年7月(産後9カ月)当時のものです。
――結婚・妊娠を考えたタイミング
10代の頃に、競技人生とプライベートのロードマップを作る講義を受け、結婚や妊娠を初めて考えました。カーリング競技には、産後復帰して活躍している先輩方がたくさんいるので、その頃から「結婚して妊娠・出産をしても競技は続けていくんだろうな」となんとなくイメージしていました。そして、以前所属していたチームの先輩が、JISSのサポートを受けて競技復帰をしていたので、その様子を近くで見聞きできたのは刺激になりました。
――プロフェッショナルのおかげで充実
妊娠期はJISSに3回通い、心理、栄養、トレーニングのサポートを受けました。トレーニングはかなりお腹も大きかったので、ストレッチなどが中心でした。トレーニング前後に産婦人科の先生の検診もあったので、安心して受けられました。
産後は定期的な測定や検診などのチェックと、サポートを受けながらのトレーニングがメインでした。産後3週間からエクササイズを始めて、徐々に通常のトレーニングに移行しました。トレーニング期である現在は、ほぼ毎週、拠点の山梨から娘と二人でJISSに通っています。私は妊娠中、特にお腹が前に大きく出ていて、産後は腹横筋の機能回復に時間がかかりました。競技復帰が駆け足だったので、怪我や体調不良が心配でしたが、丁寧なトレーニング指導のおかげで、大きなトラブルなく過ごせています。
各分野のプロフェッショナルの方々にサポートしていただいているので、充実したトレーニング期を過ごせています。また、JISSでは娘を託児室に預けられるので、トレーニングにも集中できます。娘も託児室の先生が大好きで、喜んで遊んでいてくれるので助かっています。

――家族や周囲のサポート
娘が生後6カ月になるまで、夫が育休を取得してくれました。産後初めての遠征は娘が生後2カ月の時でしたが、その時から実母が合宿や大会に帯同してくれています。娘が低月齢のころから遠征に行くことができたのは、母子ともに健康に過ごせたことと、産後すぐのダメージの大きな時期に育児を手伝ってくれた人が多くいたからだと思います。そのおかげで回復も早く、予定通り産後1カ月で練習を開始し、産後2カ月で試合ができました。また、チームの男性コーチや23歳とまだ若いチームメイトも積極的に状況を理解してくれているので、とても助かっています。
――妊娠・出産が競技にとってプラスに
妊娠、出産、育児とどれも予定通りにいかないことばかりなので、色々なシチュエーションに強くなったと思います。カーリングは選手生命の長い競技なので、妊娠、出産のタイミングを後悔したくないと思っていました。家族や周囲の理解を得られて、こうやってキャリアの中で両立できていることは、とても良かったと思っています。

――日本の女性アスリート支援に期待すること
「いつまで(競技)やるの?」「引退したんだっけ?」と言われることが本当に多いです。スポーツに限らず、女性がそう言われるのはまだまだ仕方ないのかもしれませんが、女性アスリートの産後復帰が当たり前の事になると良いなと思います。何か特別なサポートというよりも、温かく見守っていただけたら嬉しいです。
――妊娠・出産を考えているアスリートの皆さんへ
私が特別だからできることではなく、もっと当たり前に「ライフイベントのそばに競技がある」という環境になればいいと思いますし、そのためにもまずは私がそれを体現していけたらと思います。産後復帰して活躍していた先輩たちを見て、私も続けようと思えたように、私も次世代の人達にバトンをつないでいきたいです。

小穴桃里(こあなとうり)
8歳の時に両親の影響でカーリングを始める。15歳から27歳まで富士急に所属。4人制種目では、2018年に日本選手権優勝、世界選手権出場。ミックスダブルス種目では、2023年に日本選手権準優勝。第9回アジア冬季競技大会(2025/ハルビン)では金メダルを獲得。2026年ミラノ・コルティナオリンピックで日本初のミックスダブルス種目でのメダル獲得を目指す。
HPSC Female Sport vol.1より転載(一部改変)
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